アラル海地域における水利用効率と塩害の制御に向けた気候にレジリエントな革新的技術開発
プロジェクトの概要
本研究は、長年にわたる綿花などのかんがい農業による大量取水により縮小したアラル海周辺において、塩性化した土壌や地下水でも生育可能な塩生植物の資源価値を探り、限界地の小規模集落でも持続的に農業を営める技術およびビジネスモデルを内部循環型塩生農業として開発・展開することを目的とする。長期間の気候データや地球観測衛星情報を用いた水循環解析を通じて、対象地域の利用可能な水資源量、蒸発散量や作物生育の状況を把握し、それらを日々の農業生産管理の実務に活用していく中で、今後想定される気候変動への適応能力を向上させる。また、塩害の進行を防ぐためのかんがい排水管理、塩害が進行した土地における塩生植物の積極栽培による修復、および塩生植物の利活用を通じた、生産的で持続可能な農業を実現するために、塩分や乾燥に対する耐性や土壌塩分の除去能力、水利用効率の観点から最適な作物種の組み合わせを提案する。これにより、気候変動対策と農地塩分管理を体系的に実践教育する塩生農業の研究教育拠点を現地に構築する。
研究目的
- 持続可能な農業への移行を促進し、ウズベキスタンの河口
デルタ域に位置する小規模農家のレジリエンスを改善する。
(水/エネルギー/食糧/栄養安全保障、収入、気候変動) - 政府主導で、アラル海流域国際イノベーションセンター(IICAS)に構築しつつある気候変動対策と農地塩分管理を体系的に実践教育する体制を科学面からサポートし、普及活動を担う専門家を育成する。
- その実践として、内部循環型塩生農業(Circular Halophytes Mixed Farming: CHMF)
のモデルを提案する。
塩害対策
1.物理的手法
マルチング、リーチング、掻き取り、キャピラリーバリア
2.化学的手法
土壌改良材(石膏、リン酸石膏、硫黄華、硫酸等)の使用
3.生物的手法(ファイトレメディエーション)
植物栽培を通じて土壌や水の汚染を改良する。
塩類集積土壌では、塩分排除、除去、希釈、耐性機能を持った
塩生植物を用いて、環境回復。
フィールドワーク (気象・水文観測、植生調査、水質調査)
水文・気象と塩生農業の統合
主要な研究メンバー
田中賢治(京都大)
陸面水文学、水文気象学、水資源工学
様々な気候・植生帯における水循環過程の観測とモデリング
陸面状態量のモニタリングと水資源分野における気候変動影響評価
Kristina Toderich
鳥取大学(特命准教授)
植物生理生態学
樋口篤志(千葉大)
衛星気候学,水文学
多彩な人工衛星データを用いた環境動態解析を実施しており,特に静止気象衛星データの有効活用(プロダクト化等)について強みを持つ.
長野宇規(神戸大)
灌漑排水学、地域計画学、リモートセンシング
大規模灌漑農地の塩害管理
時系列衛星画像を用いた土地利用・作物診断
松尾奈緒子(三重大)
森林水文学・植物生理生態学: 植物の水利用・耐塩性
乾燥地植物の乾燥・高塩分環境における生存戦略の解明
熱帯樹木の水利用や光合成・蒸散特性の解明
安井英斉 (北九州市大)
専門:環境保全工学: 生物学的排水処理, 有機性廃棄物資源化
エンジニアリング企業で20年以上に亘って水処理プロセスの高度化・商品化を研究
アジアをはじめとする途上国に様々な省資源・創資源プロセスの社会実装を展開