• 2007年度

    GEOSSタイのWorkshop(タイ・ホアヒン、チェンマイ)(2007年4月7日~14日)
    2007年4月8日~10日にかけてタイのHua Hinで開催された日タイ国交120周年を記念して開催された国際会議「Thailand-Japan Inundatory Mitigation Discourse」において"Importance of rainfall measurement for flood forecasting"と題してGEOSSプロジェクトにおける研究成果を発表した。その後、現地(メーワン流域)に赴き、テレメトリー観測システムの測器の確認をした。また、メーワン流域および周辺域の植生や灌漑農地の様子、灌漑施設の存在状況を調査するとともに、衛星解析の検証情報(GPSによる位置情報)を一部収集した。タイの旧正月を祝う”水かけ祭(ソンクラーン)”の時期(正確にはまだ始まっていないが気の早い人たちが始めていた)とあり、貴重な体験ができた。初めは逃げていたが、スルーされるのもさびしいもので、いつしか無抵抗となっていた。また水かけ祭用に灌漑水路には普段よりも多く水が流されていた。

    Hua Hinの美しい海岸 RIDの農園 トウモロコシ畑の灌漑中
    GEOSSモニタリングサイト(No.7) 農作業の休憩場所で昼食 お弁当
    GEOSSモニタリングサイト(No.8) 水田(灌漑あり) 龍眼の果樹園(灌漑あり)


    水かけ祭の様子

    水かけ祭用に普段より多めに
    放流している
    RID水位観測所(P82)


    IUGG2007(イタリア・ペルージャ)およびポー川流域の農地調査(2007年7月8日~19日)
    2007年7月2日~13日にかけてイタリア・ペルージャで開催された「第24回IUGG(国際地球物理学連合)大会」において”Bias correction of the meteorological variables from RCM for hydrological application”と題する研究成果を発表した。さらに”Controlling meteorological factor for inter-annual variability of NDVI”と題するYorozu et al.の共著者となった。 IUGGとジャズフェスティバルの時期が重なり(無理にぶつけた?)、ペルージャの町は大変な賑わいであった。またポスターセッションの会場として地下の遺跡を活用するなど、珍しい会議であったが、アブストラクト集や論文集が間に合わず(結局2008年1月にホームページ上で公開)、プログラムも毎日出される”新聞”形式でのもので、なかなかお目当ての発表を見つけることが困難であった。なお、私が学生時代に池淵研に在籍していたカルロス・ガルバオ氏(ブラジル)も参加されていた。

    かつて中学校の地理で習った「ポー川流域の米作」を求めて会議の後に農地調査を実施した。近年作付体系が変わったのか、なかなか水田に出会えず、このあたりは概ねトウモロコシ、トマト、牧草地、ブドウ園などであった(冬には小麦)。地中海地方では夏季にほとんど降水がないため、夏の作物はほぼ全て灌漑で栽培されている。Paviaという町では今でも米を作っているという情報を得て訪問すると、確かに水田が存在した。ここでイタリアに来て初めて”トンボ”を見た。至るところに水田が存在するアジアを旅していてもなかなか気付かない”水田の機能”の一端を垣間見た。Paviaには有名な修道院があるが、その中で米が販売されていた。
    ペルージャの町 ヒマワリ畑 丘の上からの眺望
    レンタカー(日産Micra) 灌漑用放水車 放水中(トウモロコシ畑)
    トマト畑 巨大スプリンクラー灌漑装置 ブドウ園の灌漑

    Paviaの水田
    修道院ではコメを販売


    ミラノの路面電車
    Paviaの修道院内部


    アラル海流域の現地調査(ウズベキスタン・タシケント、キジルクム砂漠)(2007年10月12日~18日)
    大規模灌漑によってアラル海が干上がった中央アジアのアムダリア・シルダリア流域は、20世紀最大の環境破壊の一つに挙げられる。アラル海流域の多くは年降水量250mm以下の乾燥地帯であり、農業をはじめとした人々の生活は上流域からの河川水に多くを依存している。地球温暖化に伴う近年の急激な気温上昇は主要産業である牧畜と綿花栽培にも影響を与えるほか、流域を流れるアムダリア・シルダリアの大河川は主として山岳域からの融雪水を水源としており、融雪早期化への影響も深刻である。その結果冬季洪水が頻発する一方で、下流では夏季の用水量が不足する事態が起きている。

    甲山治博士(東南アジア研)とともに、2007年10月12日~18日にかけて、ウズベキスタンを訪問した。まず、ウズベキスタン国立大学のクルマトフ教授(後にJSPS短期プログラムで招聘)とアラル海流域の水資源問題に関する今後の共同研究の可能性を相談した。
    次に、ウズベキスタンとカザフスタンに広がるキジルクム砂漠に点在するオアシスの中で比較的規模の大きなオアシスに設置されたキジルケシック試験農場を訪問した。この試験農場では、ICBA(International Center for Biosaline Agriculture : 塩水を使用した乾燥域農業)指導の下、従来生育作物である小麦やトウモロコシに加えてアフリカ原産のソルガム(モロコシ)など,耐乾燥かつ耐塩性の作物を試験的に栽培している。農場の周囲のアルテミシア(キジルクム砂漠の優先種)が広く自生している地点において2006年11月から実施している熱収支観測や地下水位観測の測器のメンテナンスやデータ回収を行った。
    このオアシスを形成している自噴井戸は水量が豊富であるが、塩分を含むために飲料用にはできない。この塩分を含む水を使って栽培されたスイカやメロンが非常に甘くておいしいことに驚いた。余談であるが、この自噴井戸の水温は年間を通してほぼ42℃とお風呂には最適温である。満天の星空(天の川がはっきり見える)の下、砂漠にありながら露天風呂に入るという貴重な体験ができた。なお、微粒子の砂を吸い込んだようで、帰国後1ヶ月ほど咳が止まらなかった。
    塩水で栽培された果物(甘い!) ラグマン(ウズベク風うどん) 農家での夕食


    地下水位データの回収中

    クリスチーナ先生宅での夕食
    右は甲山治博士
    熱収支観測システム
    砂漠の中の自噴井戸。水量は豊
    富だが塩分を含むため飲料用に
    はできない。
    乾季には干上がる季節湖。
    白く見えるのは塩。
    バスターミナルのパン屋さん


    AGU 2007 Fall Meeting(アメリカ・サンフランシスコ)(2007年12月7日~14日)
    2007年12月10日~14日にかけて米国・サンフランシスコで開催されたAGU(アメリカ地球物理学連合)秋季大会において”Selecting the best meteorological forcing dataset for each river basin”と題する研究発表(ポスター発表)を行った。また、”Understanding of accuracy on calculated soil moisture field for the study of land-atmosphere interaction”と題するYorozu et al.の共著者となった。毎年同じ場所で開催されているということもあり、大会運営は非常にシステマティックであった。
    複数の再解析データの精度評価を行い、流域毎に最も精度の高いデータを選択して全球データセットを再構築するという発表内容に多くの方から関心を示していただいたが、「気象要素間の物理的整合性をどうとるのか?」という問いに対して「大きなバイアスが残っているよりはましだろう」という以外に有効な回答ができなかった。要素毎に判定するのではなく、複数の要素まとめての精度評価(セットとして評価)をすればいいのであろうが、全要素の総合評価となると一筋縄ではいかない。要素間の整合性は取れているがバイアスを大きく含むものと、個々の要素のバイアスは取り除かれているが、要素間の整合性が必ずしもとれていないもののどちらがいいのか、今後検討をしていく必要があろう。
    往路ホノルルを経由し、ハワイ大学IPRC(International Pacific Research Center)の相馬一義博士を訪問し、詳細な陸面過程を組み込んだ雲解像モデル(CReSiBUC)のソースコード、特に地表面パラメータの前処理過程や初期値の取り込み方法について議論をした。余談であるが、相馬博士はホノルルマラソンに初挑戦し、見事完走した。
    ホノルルのビル群 サンフランシスコの町並み 市内を回るケーブルカー
    富士山 クリスマスの電飾 ステーキ
    ポスター(現地で80ドルで印刷)


    GEOSSタイの現地調査(タイ・チェンマイ)(2008年3月12日~15日)


    地球観測による効果的な水管理の先導的実現(沖GEOSS)
    平成17年2月に第3回地球観測サミットで「全球地球観測システム(GEOSS)10年実施計画」が承認された。GEOSSの構築は、地球温暖化対策、水循環の把握などを通じ、我が国及びアジア諸国に多大な利益をもたらすことが期待される。本プロジェクトはGEOSSの元進められている地球観測システム構築推進プラン(JEPP: Japan EOS Promotion Program)のテーマ2-2「アジアモンスーン域での水循環・気候変動に関する観測研究又は技術開発」の中で走っている4つのプロジェクトの一つであり、地上観測を強化しテレメトリーで実時間データ転送をし、さらにできるだけ衛星観測も活用し、これら観測情報を通じて、さらに観測情報から流出計算をして、洪水や渇水等のWarningを出すシステムのプロトタイプをタイ北部のメーワン流域で構築することを目指している。この中で田中は「陸面水文植生モデル(SiBUC)による水循環推定に関する研究」という課題を分担している。
    平成19年度研究報告書簡略版(2ページpdf file) 最終報告書田中担当分(12ページpdf file)

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